「まちづくり」の課題は多岐に渡り、かつ各々に利害関係者がいます。時間や予算の限られた中で、複数ある事業全てに着手することが難しい場面も多々あります。目指すべき「まちづくり」のシナリオを描き、優先順位を決めて着手していくことが必要です。公平性と事業性は必ずしも一致するものではないことを前提にして、まず、核となる事業を実施することにより他の事業にも相乗効果が得られる等のシナリオを地域で共有することが求められます。
「まちづくり」には様々な立場で多くの人が関わります。当然、意見や考え方は多種多様な上に利害関係も絡んでくるため、一見同じ方向に向いているかに見えても総論賛成・各論反対といった状況で合意形成に苦労する場面は多くあります。関係者が集まり机上で延々と議論を重ねた結果、何も決まらず、疲れ果てて、事業構想が立ち消えになることもよくある話です。このような場合には、少人数でも動ける人から率先して動くことが求められます。少人数から各論賛成を積み上げて「動き」を創ること、その動きを逐次「目に見える形にすること」により関係者の巻き込みを図ることが期待できます。動かなければ次への展開もなく、事業遂行と合意形成は表裏一体と言えます。
「2」と「3」は不可分の関係にあります。「事業遂行と合意形成は表裏一体であること」の必要条件は「成果を目に見える形にすること」です。例えば、少人数で動き始めて話し合いをした場合、紙1枚でもメモにして関係者に情報共有を図ることも成果です。事業を実施すると成功と失敗の両方がありますが、「小さな成功」をポジティブに捉えて、それを関係者の目に見える形にして積み重ねていくことが、理解者や協力者を増やしていくこと、つまり合意形成に繋がっていきます。熟度が上がればパブリシティ効果によって「成果を目に見える形にすること」も関係者のモチベーション向上と共に合意形成には有益です。
「まちづくり」は地域の人がイニシアチブを取ることが絶対条件です。しかし、地域の人たちだけでは限界があり、市民というサポーターやファンの存在は欠かせません。市民の知恵、経験、ノウハウ、スキル、ネットワーク等を集結させることによって、取組内容の充実や効率化並びにスピードアップ等が期待できます。市民参画を促進して、いわゆる「ソーシャルキャピタル(社会関係資本)の豊富化」を図ることが有益です。また、関係人口の増強に繋げていくことも期待できます。
“まち”は多様な要因が絡み合う複雑系の世界です。その“まち”をフィールドとする「まちづくり」は単一の事業だけではなく、複数の事業を同時あるいは段階的に仕掛けて相乗効果が得られるよう複合技で対処していくことが必要です。「まちづくり」のビジョンを明確にして、実現のためのシナリオを描き、リーディング事業、それを補完するための小さな事業、連携する事業等を有機的に関連付けていくことが求められます。
補助金が無くなれば次年度以降、事業が継続できない話をよく聞きます。工夫や創造性のない「金の切れ目が縁の切れ目」となるような事業は避けるべきです。事業費を生み自立できるスキームで、継続性のある事業を心掛けるべきです。また、事業実施の際にはきちんとデータを収集して、PDCAによる事業のブラッシュアップをイメージしておくことも必須です。「まちづくり」は時代や社会の変化に対応することが求められる完成形のないエンドレスな運動です。一代で完結するものではなく、世代を超えて引き継ぐなかで多くの人が関わります。そして、地域の人が「住んで良かった」「今後も住み続けたい」と誇れるような“まち”に近づいていくためにも持続可能性の確保は責務と言えます。
事業計画の策定にあたっては、事業主体(地域のプレイヤー等)を含む検討組織(委員会等)の設置をお願いしています。その理由は、事業主体不在の計画は画餅に終わるか、事業に着手しても長続きはしないからです。当事者としての責任をもって目的を明確にし、手法、スキーム、収支等について充分な検討を重ね、事業主体が自立、継続できる計画となるよう昇華していきます。必要に応じて定量的、定性的調査等も行います。また、下記「6.制度活用」にある国等の制度を活用する際には、専門家による事業計画等の審査に耐えうるだけの熟度をもった計画となるようお手伝いを致します。
金(補助金)の切目が縁の切目となるような空店舗対策事業、一過性の賑わいを創出するだけのイベント、商店街から無償で提供してもらった景品を授与するガラポン抽選会等の商店街ソフト事業はお勧めできません。商店街関係者はタダ、ボランティア、打ち上げ花火的な商店街ソフト事業に満たされず、疲弊していくことが懸念されます。事業主体が自立して回せること、発展形や継続性、他の事業との関連付け等を念頭に商店街ソフト事業の計画策定から実施をお手伝いします。
歴史的建造物をコンバージョン、リノベーションして、人が訪れ、集い、賑わい創出を図るための動態保存計画を策定します。歴史的建造物の再生・活用に際して重要なことは、その地域の人たちがどのくらい関わるか、使いこなせるかです。その度合いが高いほど、地域の共有財産としての愛着を育み、後世まで継承される優良な財産に成り得ると考えています。また、歴史的建造物の再生・活用は建造物単体だけではなく、地域の良好な町並み景観の形成にも重要です。SORTIEでは再生・活用計画のソフト面(用途、機能、事業スキーム、管理、運営等)をお手伝いします。また、経験豊富な建築設計事務所との共同作業によりハード面も一体的に提案します。
髙瀬蔵再生活用事業
ワークショップは事業計画策定のプロセスで実施します。まちづくり協定を策定するために実施したワークショップでは、自分たちのまちのルールを、自分たちで作り、自分たちで実践していく前向きな行動が確認できました。シンポジウムは企画立案段階から関わりシナリオを用意します。しかし、パネラーの自由な意見や流れを尊重してアドリブで進行する方が、ディスカッションが活発化することもあるため柔軟に対応しています。講演は依頼内容や課題に対応してお話しします。先進地域の事例等も豊富に用意していますが、出来る限り私が関わった事業をお話しすることにより実践的かつ詳細なお話が出来ればと考えています。
「まちづくり」は複雑な人間関係や利害関係をはじめとする裏の事情、報告書には載らない、記載できない部分で動くことや左右される面も多々あります。私自身が地域に入り込み(住み込み)、タウンマネージャーとして、もっと正確に言えばプレーイングマネージャーとして実践したからこそ見えたことや分かったこともあります。この経験は皆様のタウンマネジメント、エリアマネジメントに有益な情報に成り得ると考えています。また、事業には市民参画を積極的に促進してソーシャルキャピタル(社会関係資本)の豊富化を図り、事業の効率化等を図っており、その具体的な事例も含めてご提案します。
支援策を活用するための事業実施は順番を間違えていると言えます。支援策活用の前提には、明確な事業構想(または計画)を有していることが求められます。支援策は事業の初動期の負担を軽減することにより、その後の継続性を確保していくためのものです。したがって、国等の制度を活用するためには、事業の持続可能性等を説明できる計画が必須になります。構想の計画化、計画のブラッシュアップ等を皆様と話し合いを重ねて、熟度を上げていくお手伝いを致します。また、中心市街地活性化法の運用、中心市街地活性化協議会の設立、運営等に関しての支援も可能です。
事業計画を策定する前提に、定量的調査や定性的調査は必須と言えます。それらの結果を整理、分析することにより問題点や計画要素を抽出し、課題の設定、方向性の検討へと至ります。定量的調査は様々あり、案件に対して適切な方法を選択することが肝要です。必要に応じて、実績豊富な調査会社等との共同で実施することもあります。