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2021/01/31
まちづくり所感

日南市のまちづくり

2020年(R2)11月、コロナ感染症対策をして油津商店街(油津一番街商店街と岩崎商店街)を訪問した。油津商店街の訪問は初めてではなく、中小機構の仕事を通して2008年(H20)頃から幾度となく足を運んでおり、10年に渡るまちの変遷を見ることができた。11社のIT企業の誘致、幼稚園の参入等、10数年前には想像もできなかった用途や機能が商店街のなかに埋め込まれて、新たな「商店街」を再構築している。なかでも特筆すべきは、決して規模としては大きくない油津商店街のなかで、2015年(H27)の株式会社油津応援団による「多世代交流モール事業(油津Yotten、あぶらつ食堂、ABURATSU GARDEN)」及び2017年(H29)の日南まちづくり株式会社による岩崎3丁目東地区優良建築物等整備事業(ITTENほりかわ)」の2つの大きなハード事業が実施されたことである。形の話ではないが、形は言葉での説明を必要としない圧倒的な説得力を持っており、多くの人に分かりやすい。

2015年(H27)12月以降、油津商店街を10回訪問して「その後」を観察してきた。その関係で、本稿に使用する写真は2020年(R2)11月に撮影したもの以外も何枚か含まれている。

ITTENほりかわは油津一番街商店街のアーケードを挟んで、東棟(8階建)と西棟(5階建)から構成されている。国道222号側に面した壁面に設置されたボルダリング施設が特徴的である。東棟の1階にはケーブルテレビ局、IT関連企業のオフィス(当初は飲食店、物販店が入居していた)、日南市子育て支援センター「ことこと」、2階には日南市創客創人センター(市民活動センター)、3階には医療施設、6~8階は日南市初の分譲マンションが入っている。4~5階はケア付き高齢者住宅と聞いていたが高齢者の入居及び事業実施の確認ができなかった。また、1階商業施設部分は一部が空店舗になっていた。西棟の1階にはIT関連企業のオフィスと商業施設(ラーメン店、一坪店舗)が入居している。一坪店舗の数店舗は空店舗になっていた。

ITTENほりかわ

油津商店街(岩崎3丁目アーケード)

油津一番街商店街

ITTENほりかわ:1階商業施設(空店舗の状態)

ITTENほりかわ:日南市子育て支援センター「ことこと」

油津YOTTENがある岩崎商店街のアーケード天板は撤去されフレームのみが残る状態になっている。油津YOTTENのオープンを機に宮崎市内から出店した手羽先店は撤退したようだ。お洒落なIT関連企業のオフィス、メルヘンチックなデザインの幼稚園(恐らくIT企業で働く子育て世代の子どもを預かる目的)が目を引く。岩崎商店街振興組合は解散したと聞いた。閉店した個店もあった。

IT関連企業オフィス

幼稚園

あぶらつ食堂はオープン当初のお店から何店舗かの入れ替えがあったようだ。飫肥杉を使った長さ約30mのカウンターが6つの店舗を貫くのがインテリアデザインの一つの目玉だったが、現在では各店舗間は暖簾で仕切られていた。当初は、あぶらつ食堂内で営業する店舗間でのケータリングが行われていたが、現在はどうなっているのだろうか。

YOTTEN油津とあぶらつ食堂に囲まれる中庭

あぶらつ食堂

ABURATSU GARDENでオープン当初から残っている店舗はプリン専門店のみであった。他の子供服・雑貨店、手作りパン店、スィーツ店、ネイルアート、リラクゼーションサロンは撤退し、古本店とIT関連企業オフィスが新たに入居していた。空コンテナは貸しスペースとなっていた。

ABURATSU GARDEN

清掃活動をする人たち

日南市中心市街地活性基本計画(計画期間:2012年12月~2017年3月)への取組みに係る最終フォローアップ報告書(2017年7月)における市民アンケート調査の「中心市街地活性化事業の実施前との比較について」では、「変わらない(42.0%)」「にぎやかになったと感じる(29.0%)」「無回答(16.0%)」「わからない(10.1%)」「活気がなくなったと感じる(2.9%)」という結果が出ている。約3割が「にぎやかになったと感じる」と回答している。「変わらない」「活気がなくなったと感じる」の合計は4割強であった。

縮小社会、モノが売れない時代において、日南市中心市街地は商店街を昔の姿に戻すのではなく、別の機能を埋め込んで新たな意味付けをする、再構築することで一つの方向性を示した。「地方創生のモデル」「たった3年で再生された商店街」と形容される油津商店街が今後、どのようになっていくか興味深い。

以前、私が中心市街地活性化協議会支援センター・まちかつに執筆した「地方小都市の商店街に人を呼び戻す仕組みづくり~市民と株式会社油津応援団の挑戦~」も併せてご一読頂下さい。

地方小都市の商店街に人を呼び戻す仕組みづくり~市民と株式会社油津応援団の挑戦~

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