熊本市のまちづくり(2)
過日、熊本市を訪問した。
熊本市は2016年(H28)4月の熊本地震により熊本城をはじめとする歴史的文化遺産や生活インフラ、都市機能等が甚大な被害を受けた。2017年(H29)策定の第3期熊本市中心市街地活性化基本計画では「熊本地震からの創造的復興」をテーマに中心市街地活性化の推進に取り組んでいる。
下通りアーケード
2019年(R1)には桜町地区再開発事業によりホール、住宅、ホテル、バスセンター、商業施設(サクラマチクマモト)等が整備された。また、熊本城との一体的な公共空間を創出する「桜町・花畑地区オープンスペース整備事業」が2021年(R3)完成に向けて整備中である。JR熊本駅前の大型商業施設開発等も控えている。熊本市は都市更新の真っ只中にある。
一方で城下町・熊本の雰囲気を残しているのが、町割り、町家(熊本では「町屋」と表記するらしい)、歴史的・文化的資源等が残る新町・古町地区である。熊本地震により被災した歴史的建造物のなかには復旧の目処が立たないものもあり、震災前に残っていた約400棟のうち50棟以上が消滅したとのことだった。
震災1年後に訪れた時にブルーシートで覆われていた下記写真の町家は無事に復旧工事が完了していた。通りに面した店部分の奥にある蔵2棟も綺麗な白漆喰で復旧されていた。工事費は県の文化財復興に係る補助金(補助率2/3)が活用されたとのこと。立派に整備されているが、地域に還元するような利活用は未だされておらず、早期に着手されることが望まれる。
対面には町家を活用した若い人が経営する店舗がオープンする等、町家の保存活用や賑わいの創出に向けた動きも出てきている。この店舗は対面の町家が復旧することを前提に近傍から移転してきた。失礼な言い方になるが、城下町地区は町家が残ってはいるものの面的、線的にインパクトを与えるものではないかもしれない。しかしながら、このような「小さな集積」を創る(保存活用する)ことによりエリアとしての魅力や価値向上等による波及効果は期待できる。
震災直後に被災文化財所有者等連絡協議会を立ち上げ、町家の復旧、保存に尽力したのが㈱人間都市研究所の冨士川一裕さんやNPO法人熊本まちなみトラストだった。冨士川さんによると、熊本地震、令和2年7月豪雨と立て続けに起こる災害も、平時に町家を残すことができないことも、両者ともに「壊す」ということには変わりない。町家をはじめとする文化財が示唆するものは人々が暮らしてきた歴史の証であり、それらの記憶を継承していくことがまちには必要と言われた。そのためには、より地域社会の裾野へと文化財等の持つ意義を広げていくことが必要であり、これを「草の根文化遺産」(の活動)として位置付けているとのことだった。(お聞きした内容の解釈が間違っていたらすみません。)「草の根文化遺産」が今後、更にどのように拡充、展開していくのか興味深い。